出典URL→http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20100624/233430/?P=1
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「効果的なウォーキングフォーム」と、「より全身に効く」ノルディックウォーキング
2010年07月07日
前編では、「3日坊主にならないウォーキング実践」のコツを、袋井市でのウォーキングイベント育成に成功して注目を集めている静岡理工科大学の富田寿人准教授に聞いた。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20100618/232447/?P=1
そこで今回は、より実践的に効果を上げていく方法について、さらに突っ込んだ内容を語ってもらった。
文/澁川祐子
編集/漆原次郎、連結社
写真/風間仁一郎
高血圧予防には「まずウォーキング」が有効
静岡理工科大学・富田寿人准教授。
1日おきに30分、時間を見つけて歩く。それだけで運動不足が解消される。静岡理工科大学の富田寿人准教授からそう聞いて、少しやる気が出てきた。やるからには、それ相応の効果を期待してしまうのが人情だ。
「歩くことで、まずは筋肉や骨に適度な刺激が与えられ、足腰が鍛えられます。と同時に、脈拍数が上がって心臓、肺などに軽い負荷が加わり、呼吸循環系のトレーニングにもなります」と、富田准教授は説明する。
さらに、長めに歩くことで脂肪の消費が高まり、肥満の予防もできる。1日の歩行量が増えるほど、動脈硬化を防ぐ善玉(HDL)コレステロールが増加することも明らかになっている。
肥満や動脈硬化は、血圧を上げる元凶ともいわれている。これらを防ぐことが、高血圧の予防や解消にもつながっていく。
なるほど、「歩く」という日常行為を意識的に行うだけで、健康の土台づくりができるというわけか。万歩計を持ち歩き「今日は何歩歩いた」と自慢するウォーキング実践者に対し、「気休めかも?」とひそかに思ったこともこれまでにあったが、そんな自分をちょっと反省した。
効果を上げるウォーキングは、「ちょっと速歩」
こうしたウォーキングの効果を最大限に引き出すには、「ちょっと速足」がポイントだ。
静岡理工科大学・富田寿人准教授。
「無理して速く歩く必要はありません。福岡大学スポーツ科学部の田中宏暁教授らは、理想的な歩き方を『ニコニコペース』と表現しています。つらくてしかめっ面になるまでスピードを上げてはダメ。ニコニコ笑って隣の人と話せるくらいの余裕をもって、元気良く歩けるペースが『ちょっと速足』なんです」(富田准教授)
体重60キロの人が「ちょっと速足」で歩いた場合、1分間の消費カロリーは約4.2kcal。ぶらぶら歩きだと約2.7kcal。30分歩いた場合では 45kcalの差が現れる。
むろん絶対条件ではないが、どうせ歩くなら「気持ち速め」を心がけたほうがトクなのだ。
「速足で歩くには、少し腕を振ってみるといいでしょう。腕を振ると、歩くリズムが生まれます。足を速く動かそうとするよりは、腕を元気良く振るように意識したほうがちゃんと足が動きます」(富田准教授)
フォームは「モデルのように颯爽と」
富田教授は、「歩くならではの楽しさを見つけることが大切。修業のようになると長続きしない」と話す。
富田准教授は「決してそうしなければならない、ということではないんですが」と念を押した上で、基本フォームを教えてくれた。
肘を90度くらい軽く曲げ、腕でリズムを取る。歩幅は少し長めに取り、かかとから着地して、つま先で蹴る。姿勢は、「モデルのように颯爽と」が理想。腰が落ち気味になると、膝が曲がり背筋も曲がる。すると歩幅が狭くなるだけでなく、足腰にも余計な負担が掛かってしまう。
腰は、心持ち引き上げる。顎を引いて目線は10~20m先に。これらを意識すれば、自然と姿勢も良くなり、ウォーキングの効果がアップする。
さらに効果を求めるならば、オススメは「ノルディックウォーキング」だ。
ノルディックウォーキングが、「リハビリから健康アップ」まで効く「理由」
ノルディックウォーキングは、別名「ストックウォーキング」「ポールウォーキング」とも呼ばれる。
ノルディックウォーキングでは、ストックを足元に突いて、腕でぐいっと前へ押し出して歩く。
登山の際に使われるポールやスキーのストックを使うウォーキング法の一種で、ノルディックスキーヤーたちの夏場のトレーニングから派生した。トレーニングでは、ストックをつきながら、野山のアップダウンを走るようなスピードで歩く。
富田准教授がこの手法を最初に目にしたのは、リハビリテーションの現場だった。ストックは、体の支えになると同時に、歩く補助用具としての機能も発揮する。安全性の高い三つ又や四つ又の杖よりも、より積極的に「歩く」ことに重点を置いた器具として、リハビリに活用されていたのだ。
その様子を見て、「これは足腰が弱い人のために応用できるのではないか」と考えた。
「高齢者の方の中には、少し足をひきずるような歩き方をされる人もいらっしゃる。『ちょっと速足で歩きましょうよ』と言っても、膝や腰が痛くて速く歩けない方がいる。ではどうすればいいか。そこで思いついたのが、ノルディックウォーキングだったんです」(富田准教授)
ストックを使うだけで、「消費カロリー2割増し」
ストックを足元に突いて、腕でぐいっと前へ押し出して歩く。すると、肩周りの筋肉や上腕三頭筋が収縮し、自然に背筋が伸びる。このように肩や腕まわりの筋肉をたくさん使うことによって、ただ腕を振って歩くときより全身運動に近くなる。
普段のウォーキングでは、右足が前に出るとき左手が前に出る。ノルディックウォーキングでも同様に、右足が前のときに左手が前に出ているのが自然体。
結果、「同じスピードで歩いても消費カロリーが20%くらい増える」というから驚きだ。
「健康な人の場合、ストックを使うことで前へ体を押し出す力が加わるため、歩幅が大きくなってペースが上がり、さらに効果が高まります。足腰が不安な人にとっては、ストックを持つことで支持点が増え、安定性が高まります。また、ゆっくりでも押し出すように歩けば、速足で歩いたのと同じくらいのカロリーを消費できます」(富田准教授)
「ストックを使っただけ」で、ただ歩いているよりも「2割増し」。いいこと尽くめではないか。さっそく、ポールをお借りしてチャレンジしてみた。
まずはストックを意識しないよう、ストラップを手首にひっかけるだけ。ストックを握らず、手を振って歩いてみる。
次に、肘が90度になるようストックを握り、右の足元に突いて、ぐっと腕の力を入れ、左足を前に出す。……はずが、なぜか右足が前にトン。これって、ナンバ歩き?
慣れれば誰でもストックを使いこなせるようになる
「最初はみなさん、そうなりますよ」という富田准教授の言葉に慰められながらも、なかなか右手右足、左手左足の同時歩行から抜け出せない。ストックを意識しすぎるあまり、数歩めには手と足が揃ってしまうのだ。
先端には角度が付けられている。ストックはスポーツ用品店で、2本1組で1万円前後から。
ふと周囲を見回せば、同行の編集者やカメラマンも自分と同じく、からくり人形のようにぎこちない動きをしている。その姿に励まされて何度も挑戦しているうち、かろうじてまともに歩けるようになってきた。
歩けるようになってくると、歩幅も広がり、スピードも上がってくる。
ストックの先には滑り止めのゴムが付いており、確実に地面をとらえてくれる。ゴムの先端は前方が斜めにカットされ、自然に体が前へ押し出されるように設計されている。
心地よい弾みを感じるまま、調子に乗ってバタバタと歩いていたら、「歩幅が大きすぎます」との注意。あくまで無理は禁物だ。
ストックを使うと全身運動になる
このようにストックを足元で交互に突くのは、平坦な道でのやり方だ。急な上り坂の場合、つま先よりも前に両方のストックを突いて、体をぐっと押し上げるようにして歩く。
ストックには、先端が丸くなっているタイプもある。
「個人差はありますが、勾配が10%を超える急な上り坂になると、ふつうの突き方では、高い効果が得られません。腕の筋肉を使っていないのに等しくなってしまいますから。なので、両方のストックを前に突き、体を押し上げるよう意識する。このやり方によって、急な上り坂でも2割増しの効果が得られるようになります」(富田准教授)
この「2割増しの効果」は、なんと5~8kgくらいの錘を持って歩いているのに匹敵するという。
「ときどきペットボトルを持って歩いている人がいますよね。でも、あれは軽いのでほとんど効果がないんですよ。ものすごく元気良く腕を振っているときはいいですが、疲れてきて振り幅が小さくなると、持っていてもほとんど意味がありません」(富田准教授)
たった2本のストックを持つだけで、「簡単な話、15分の歩行で20分歩いたのと近い効果が得られる」という。たしかに、ふだん使わない二の腕にも適度な力が加わっていることがわかる。続けたら二の腕のたるみが引き締まるのでは、という淡い期待ももたげてくる。
ウォーキングは、「背広でもできる運動」
ふつうに歩くよりも、効果が20%アップするノルディックウォーキング。ヨーロッパではすでに、広く普及している。以前、富田准教授がドイツのベルリンの森を歩いたとき、健康のために歩いている人のほとんどが、ストックを持っていたという。
ただ、日本での普及はまだまだ。「イベントのときに貸し出し用のストックを持っていって紹介すると、みんな『いいね』と認めてくれます。でも『ちょっとひとりでは恥ずかしい』と言うんです」と富田准教授は苦笑する。
人目を取るか、効果を取るか。健康のことを真剣に考えるなら、ノルディックウォーキングの効果は捨てがたいところだ。が、ストックを突きながらアスファルトの道を闊歩する自分の姿を想像してみると、正直気後れする。やるとしたら、せめて日が沈んでからかも。
富田准教授はウォーキングのことを、「背広を着ていても、革靴を履いていてもできる手軽な運動」と言う。1日おきに歩くのが難しいなら、せめて平日はひとつ手前の駅で降りて歩いて帰る。エレベーターやエスカレーターに極力乗らないようにする。
そして週末、長めに速足で歩く。「三日坊主」にすら到達しない私ゆえ、まずはそんなところから、始めてみようか。
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富田寿人(とみた・ひさと)
静岡理工科大学准教授。高校時代、陸上選手として活躍するものの、怪我で競技から退く。教員を志して1978年、早稲田大学教育学部に入学。運動生理学のおもしろさに目覚め、順天堂大学大学院体育学研究科に進学。早稲田大学助手、静岡理工科大学講師を経て、95年より現職。袋井市の健康づくりに携わる一方、スピードスケートのショートトラックのトレーニングドクターとなり、長野オリンピックでのメダル獲得にも尽力した。日本スポーツ少年団の委員も務め、子供のスポーツ、競技力、中高年の健康づくりと、幼児から競技者・高齢者まで幅広い研究を行っている。
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