ストック歩行とは、一般にノルディックウォーキング、ポールウォーキング、スキーウォーキングとそれぞれ呼ばれ、それを総称して言い表すのがストックウォーキングとされる。ストック歩行はその略称である。
両手にストックを使って歩いた人ならばあまねく感動を覚えるこの歩行方法は、誰しも確実な運動効果を五感で受け止める。体験した人々はまことに素晴らしい健康増進のための運動プログラムであると肌で実感する。が、その理由はそれが人類の体験したことのない四足歩行であるからだ。
その人類がナックルウォーキング(類人猿四足歩行の一種)から直立二足歩行に進化したのが160万年前の原人時代とされるから、ストックを使うこの直立四足歩行の歩き方は、それ以来驚愕の進化であり、自らの歩くことに関する“人類史上初の快挙”と言えるのではないだろうか。
遠い昔、われわれの祖先である原人は、やがて歩くことに代わる手段として哺乳動物の背に乗って移動することを覚えた。そして筏や舟で水上を移動する道具をあみだした。だから歩くこと自体を進化させる必要性はなく、そのための知恵をわざわざ絞るには至らなかったのだと思われる。
一方、二足歩行を獲得した人類は棍棒に始まり手には槍や刀などありとあらゆるものを持った。が、杖はバランスをとるためのもので推進力にはけっしてならなかった。やがて車輪が紀元前3,000年のメソポタミア文明に生まれ、馬車やチャリオット(戦車)になるのである。
飛ばして近世産業革命以降は内燃機で陸海空を制覇し猛烈な速さの移動手段に発達する。このように歩くことに代わる移動手段を常に編み出した人間は、歩くことを補助するための用具などを想い浮かべる必要すらなかったのか。
この移動手段である車両のみならず後世肉体労働も機械化され運動不足から誰も逃れることの出来ない世の中になって、はじめて心身への悪影響が叫ばれ、その対策が取られたのは20世紀に入ってからのことである。
現在IT社会下の運動不足病は深刻さを増し、人々はそれをこのまま放置するこを許さなくなった。この間各界でさまざまな健康のための運動プログラムが数多く考えられる。そのなかでいま残る一番身近な運動でメジャーなものはなんといってもウォーキング&ランニングでありましょう。
これは20世紀が残した代表的な健康運動プログラムであり、ともにアスファルトロードを使います。が、そこには残念ながらそれぞれ大きな弱点が存在する。その弱点とはウォーキングの運動強度は弱過ぎ、ランニングは万人にとり強過ぎるのである。
言葉を変えて言えば、ウォークは充分な効き目がなく、ランニングは壮健でなければ取り組めないものであった。その背景があり、その中間の運動プログラムこそ人々が待ち望んだものである。それが直立四足歩行という全身運動のストックウォーキングである。まさか160万年前の先祖帰り四足歩行とは、まことに皮肉なものである♪
幸いストックを使う歩行は全身運動でありながら如何様にも強弱をコントロールすることが容易である。このためこれまでのウォーキング層も、そしてランニング層も双方容易に包み込むことが出来るという極めて戦略性に富んだ、21世紀の健康増進のための運動法であって、幼年期から老年期までの生涯スポーツなのであります。(つづく)
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